戦乱の16世紀

 人類の歴史は戦争の歴史の連続。と言われてしまうと身も蓋もないが、特に16世紀は世界各地、そして日本において戦乱の世と特筆できるだろう。欧州では宗教戦争による憎悪が激しく渦巻き、

・1546年~1547年にカトリック教会側:神聖ローマ皇帝カール5世とプロテスタント側諸侯=シュマルカルデン同盟が争ったシュマルカルデン戦争

・1562年~1598年にフランスにおいて新教・旧教が激突したユグノー戦争

が起こっている。欧州内が混乱する中、イスラム世界の欧州への進撃も激しく、

・1529年にオスマントルコ帝国が第一次ウィーン包囲を敢行し、ウィーン攻略失敗に終わるものの中央ヨーロッパしかも権威的存在である神聖ローマ帝国の中枢にまで侵攻したことはキリスト教を信奉する欧州諸国に強い衝撃を与えた。

上記のようにイスラム世界は1520年~1566年にスレイマン1世の治世下で東西に積極的な遠征をおこない勢力の拡張を図った。一方、転じて日本に目を向けると戦国時代真っ只中である。

・1546年には北条氏河越夜戦で関東支配を確立

・1553年~1564年の間5次にわたる川中島の戦いが上杉氏と武田氏で激戦

・1561年には桶狭間の戦い織田信長今川義元を撃破

など日本全国で著名な戦いが繰り広げられており、16世紀当時、世界で最も鉄砲を量産・保有していた国は日本ともされている。世界中での継続的な戦乱は既存の宗教システムや国家の統治システムにも多大な影響を与えた。特に欧州、日本において共通するのは宗教の普遍的権威がますます弱体化したことである。欧州の新教・旧教の対立は、絶対王政による統治の嚆矢となり、日本においては伝統的な仏教などは新たに伝来したキリスト教に直面し、織田信長豊臣秀吉徳川家康、そして西国のキリシタン大名などの政治的経済的駆け引きに埋没していく。

 このような戦乱を経て欧州諸国、日本は近世へと進んでいく。欧州諸国はこの戦乱の世紀が次の世紀にも継続し、”17世紀の危機”と呼ばれる状況にまで至る。しかし戦争は多大な犠牲の一方で政治経済、科学に大きな影響を与え続け、欧州諸国では一気に近代世界へと変化していく。